自然と共生する世界に向け、社会を変えるにはどうしたらいいのか。国際科学者組織「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」は18日、生物多様性を損失から回復に向かわせる際の障害や、その乗り越え方、よい取り組み事例について分析した報告書を発表した。

写真・図版
ナミビアで開かれたIPBESの総会=IPBES提供

 2022年に開かれた国連の生物多様性条約締約国会議(COP15)では、各国が50年までに「自然と共生する世界」をめざすことに合意した。ただ、生物多様性や気候変動などの地球規模の問題は、複雑で様々な要素が絡み合い、解決には「社会変革」が必要だと言及されることが多い。

 どうやって起こせばいいのか。

 IPBESは生態学の専門家らが多く関わるが、今回の報告書は社会学者なども加わって数年がかりで議論を進めた。

自然と共にある文化が効果

 報告書では、変革を妨げる要因として、自然と人との関係の断絶▽権力と富の集中▽短期的で物質的な利益の優先――の三つを挙げている。そうしたくびきを超えて、変革を進めるには、(1)平等と正義(2)多元性と包摂性(3)自然と人の尊重と互恵(4)臨機応変な学習と行動――が鍵になるとした。

写真・図版
2022年に開かれた国連の生物多様性条約締約国会議(COP15)の会場。「自然と共生する世界」をめざすことに各国が合意した=カナダ・モントリオール、矢田文撮影

 では、実際にどのような戦略の効果が高いのか。報告書では、世界の様々な地域から集めた391件の取り組み例を評価し、変革につながりやすい特徴を浮き彫りにした。

 「生物多様性が豊かな場所の…

共有